その男ヌーヴォーにつき

若い頃の相川翔主演のVシネは結構面白い。黒沢清が撮ったシリーズはさることながら、べたべたなヤクザものでも居酒屋で夕方にかかったりしてると結構見れてしまう。ストーリーやアクションの陳腐さを一切取り払ってしまう雰囲気が相川翔にはある。案外演技に癖がなく、どんな役でもこなすし普通にスゴみがないのになんでノワールばっかり出ているのか不思議なんだけど、とにかく声が変なのがいい。どんなめちゃくちゃな場面でも声が変だからアリになってしまう。マンネリVシネで肝要なのは主要キャラがみな最後のほうまで死んではいけないところで、相川翔は弾が当たらない銃撃戦がとても似合う。おそらく本人私物なんだろうリムの太いメガネもコステロっぽく似合ってる、普通に虜になってしまった。デビュー作の鉄砲玉ぴゅ〜から既に完成されていた愛らしい小物感、そいや有吉にクソ似てる

それに比べて白竜はマジで怖い。現場がヌルすぎて演技を放棄するんじゃないか、というメタ的な恐れを抱かせられるくらい醸し出すものがありすぎる。前の職場にぜんぜん仕事もしなければ無駄話で調整役を買うわけでもない超人的にシャイな別の島の上司がいたんだけど、その人は顔が白竜にそっくりだったせいで私は心底彼を恐れており給湯室で彼の陰口が展開された際にも無駄に肩を持ったりしてしまっていたほどだった

 

ライブ中にローランドのシンセが壊れて最後の2曲は生ピアノに変えて大変だった。軽いしフィルターの再現度がかなり再現度が高いから、ライブにはいいだろうとはじめてちゃんとしたデジタル機材を買ったのに、1年くらいでバテるのは甘利にも終わってる。パネル部がガチガチに金属なのに情けない。いまは黒光りするゴミなのに。金輪際ローランドは信用せずベリンガープロフェットクローンを大人しく待つことにしつつ今後クソ重いブラザーのオルガンとエフェクター何個かを持ち運んでライブに行くのかと思うとダルすぎる。指先からオルガンの音が出たらいいのにな。それにしても楽器がうまくならない

ローランドは外国人社長になってからプロユースとエントリー機材の境目にあるオリジナルな面白いところが急になくなってきた気がして心配。顧客をナメたり中国に向かわざるを得ないところはあるんだろうが全然レガシーが生きていない。多分、抵抗とか真空管やらの入手の問題で昔そのままの回路が作れなくなってて、というのもあるんだろうけれど、ベリンガーくらいの完成度でも、いじってれば全然燃えるアナログ魂というものは確実にある。それなりの精度でいいから復活させてほしい。ロシア製の部材がとれなくなってなおさらアナログシンセまわりは辛いんだと思うが

 

深堀骨の新刊が出るらしくとても楽しみ。文体圧がものすごく、好きになってはいけないと感じてしまうくらいの反則技を繰り出し続けているおっさん。中高生の頃に文芸誌でくらった変な作家、阿部和重本谷有希子舞城王太郎笙野頼子らへんは情報量が溢れておりこれがゼロ年代だったのかというかんじだったがみな各々落ち着いてくるか気が触れてきている感もありそのなかで深堀骨はばりばりクラッシックなんであって木下古栗は自覚的職業的にこなしているところもなかなか好きだ

 

変わらないといえばバーホーベンのベネデッタ、修道院での奇跡をもとにしたサスペンスは奇跡というものがある程度の意外性が求められるという事象に着目した揺れがすさまじい、奇跡を奇跡として受け入れてしまえばもうそれは茶番という危うさ、ペテンゆえに信じたいというペスト禍の人間心理がとてもスリリングであったけれども大枠は予知夢にうなされ革命戦士として目覚めたシュワちゃん大暴れのトータルリコールと大差ない手堅さで、この映画のことはすぐに忘れてしまうだろうとも思ったしそれはそれでいい。惜しくも我が国には佐村河内守容疑者がつい最近降臨したばかりだし彼は確実にキリストであった、調整音楽という千年王国復権を目指さし数万円ぽっちのギャラで錬金術をおこなった彼のソウルはとても美しくいつまでも私の心の中に残るだろう。佐村河内守、どんな哀れでもいいから音楽を続けてくれ、まだムーンドックになる道は残されているのだから、彼にベリンガーのモノシンセという秘蹟が与えられますよう、お祈り申し上げます