イエス降臨LOVE

小島信夫の別れる理由を読み始めたがサイケ感がやばい、彼のボイスの複相性というか、流れを一つに決め切らないいいかげんさというか、第三者語り冥利に尽きるような、「…と言うだろう、言わないかもしれない」みたいな残尿感、いいかげんにせえよ、と思わなくもないがブログ以前のブログといった具合でスリルがある

 

ギャンブルは金を種に金を産む行為なので金の効用を考えてはならない。商品やサービスの価格から勝ちたい金額を思い浮かべベッドする行為は全てスケベと見なされる。投機はストイックな行為であるといえる。1000円のベッドとラーメン1杯を食った満足感は比較不可能なんであり、1000円のベッドから得られるのは10万円にも0円にもなり得る未来なんである。競馬で電車賃を除いた額を完全にスッたときの心地良さの源は、その可能性に対する満足のみである。寺銭が比較的高い宝くじを買うやつはバカだ、という声は多いが、それはひろゆき的発想であって、宝くじファンが買っているのは6億円が手に入る可能性であることがほとんどだろう、特に悪くはない趣味だと思う。

いっぽう金を金として相手に受け取られる奇跡はマルクスモーセ岩井克人によって説明が尽くされているが未だに解せないのがなぜドンキーコングではバナナを集めなければならないのかということだ。100個で1UPつうのはマリオ時代の名残として受け入れられるもののなぜ主食をせっせか集めなければならないか、あれは不気味だし、今振り返ってもスーファミにしちゃあり得ないグラフィックの良さだったと思う、あのゲームの魔術性は凄まじい。泳ぐステージは特にもう一度やりたい慣性の心地よさがある。ドンキの残りライフはバルーンで表記されていたと思うが、王様のブランチで渡部がバルーンになって飛んでいくギミックで降板が知らされた際に思い出したのかもしれない

 

映画はいろいろ観たがイチオシは宇宙探索編集部、中国のムー的オカルト雑誌編集長の最後っ屁感動巨編で、エセ化学にやたら寛容な共産党のお墨付き映画。テンポが遅くドキュメンタリー調な農村風景が続くが、多様されるジャンプカットのグルーヴが心地よく、ストーリーは新約聖書ドンキホーテもブッタの伝説も飄々と乗り越える

 

あと今思い出してもバービーは良かったし、大半の日本人の批評家連中が誤解していたのは本当にキミが悪かった。ガワはフェミ映画ではあれど、バービーは自主映画時代からこれまでのグレタガーヴィグの携わった映画と何ら変わらない構成で、つまりは女の子が進歩的な思想を深化させて邁進するものの、なんだかイヤな目にあって、それでもいいか、自分は美人でもあるしな、置かれた場所で咲くかいな、というトホホな話なんであるし、そのトホホ感のリアリズムに彼女は惹かれ続けているように見える

これは決して女の子をチアする映画には見れないし、そう誤解した人間は欧米事情、多様性尊重映画がマスのものであり資本にとっては規範にさえなっている、という点を理解できていない。二酸化炭素排出くらいみんな好きな話で、金になるし、そうしなければいけない窮屈さをむしろグレタさんは嘲笑うかのようにトホホなフレーバーを散りばめている

グレタさんの原動力にはもちろん世直しのようなところはあるんだろうけれど、本当はもっと漸進主義的なんだと思う。彼女が向き合っているのはエーガ界のマッチョさ、そして自分のヲタサーの姫的気質と外見といったところで、商業映画になろうとそれを棚上げにしない実直さが映画バービーの感動を生んでいる

その芯の強さがあってこそ、どれだけ美男美女を多様しようが、抑圧的な大衆を冷笑しようが、自作含む過去作の引用をちりばめようが、自分らしく生きることの尊さを伝えることに成功したんだと思うし、新宿のスクリーンでは隣に座ったクマさん系同士のカップルは泣いていた、俺も泣いた…

 

イラン映画、熊はいないもよかったが

あとファルコンレイクもよかった。ジュブナイルもののゴーストストーリーてのはぐっとくる

 

ウェスアンダーソンの新作、題名は失念も、快作で箱庭的セットでウェスアンダーソンはなんか突き抜けたと思う。あまりインスタ的なカットもなかったし。それより驚いたのがパルコのなかのシネクイントホワイトのスクリーンは細かいプツプツがついていて、そのせいで映像がガビガビになっている!誰も文句も言わないのが不思議なくらいだし、何より許せないのが余白なしのスクリーンの端が丸みを帯びているところだ、何故…スクリーンが四角くないのでどんなカットもよくわからん。四隅の数センチを映さない英断をしたパルコ文化事業の実行力は目を見張るものがある。こりゃ国際問題になるんじゃないか。まさか世界の監督連中はここ渋谷で四隅が切れた状態でかかってるとは夢にも思わないだろうな。しかしなぜスクリーンがプツプツしているのか、今思い出しても怒りが止まらない。とはいえ映画くらいしか楽しみがないこっちのほうが悪いんであって、スクリーンにプツプツした点を入れた方がきっと良いこともあるんでしょう。パルコのロゴもしっかりプツプツさせて、これからも完全池袋化した渋谷の未来を懲りずに明るく照らしてください