誹り詰り無視

こちとら相変わらず金が無いうえに近所の居酒屋がつぶれそうだ。WBCは一部のバーを除いてステイホームだった模様。仕事帰りに寄る茶店でも普段大声で店主に政治論議をふっかけるジジイがずっと一方的に大谷クンの話をしていた。キューバが野球に熱心な理由がわかった

その茶店はやたら美術研究にイカれた学生も多くダルい、現代美術が終わったことをいまさら茶店で確認するんじゃないよ、シューカツ期にだけやたら流行するブレーンストーミングだか、なんとかシンキング同様こんな不毛な話はない、こんなことすんなら幽霊でも探しにいったほうがいい、そっちのほうがよほど物事の本質というものであろう

 

◯最近印象に残った映画

ペルシアン・レッスン

…ナチ物のアホ映画が好きな私に情けをかけて戸川が誘ってくれたんだけどもこれは傑作だった!ペルシア語が話せるとフカしてガス室送りを免れたユダヤ人の実話をもとにしており150分ひたすらに展開される人工言語生成がとてもスリリングなことのみならずドイツ将校らも微妙にはみ出し者というなかで偽ペルシア人に共犯の片棒を担がされ、種明かしもめちゃくちゃ感動するこれ以上ない最高の言語SFだった。よすぎて外出ても目がチカチカしたわいね。全てのことには理由があるという映画の特性を活かしきっており胸をすく

 

フェイブルマンズ

…日経レビュー以外の下馬評は良く、期待して観たもののはずれ。スピルバーグがこれで何が言いたいのかわからん。電気技師の父と芸術家の母のもとに生まれ、少々の不和はあれど彼の人生はひたすらに恵まれており、成長譚にもなっていなければ、特にターニングポイントもない。前半がよかったのはデビュー作衝突から始まる彼のキャリアは早々に子供の頃にビジョンがあったというところで、こういったところがハイライトになるのかと思いきや、映画界に入るまでがだらだらと描写されていく150分。ジョンフォードに説教されるのもいいがそれよりも中盤に蓮實重彦にブン殴られるべきだ、と思う。プライベートライアンもどきを撮影する高校生時代でもっと粘ってもよかったんじゃないか、そのシーンはよかったから。最初からスピルバーグだったとするか、スピルバーグになったとするか、どちらのスタンスにも立ちきれていないのは、あまりにもったいない

 

新・仁義の墓場(unext)

三池崇史の実録物リメイクのVシネは東映ビデオらしくつなぎがガタガタなのはご愛嬌として、岸谷五朗の演技が素晴らしい。鬼ゾリ坊主→金髪ボサ頭→鬼ゾリパンチという変遷を序盤の10分で見せつけるのはヤバいし劇伴のクールジャズがそれをなんとかカッコいいかもねくらいには持っていっている。岸谷に無理矢理処女を切られてから秒で尽くす女と化すヒロインの顔面が放送コードにひっかかるんじゃないかというほどのリアルなサセ子でぞっとした。なんて女優なんでしょうか。後半、物語のスジをたぐりきってからひたすらの岸谷のシャブ中の演技は圧巻

 

◯最近印象に残った本

ブラック・トムのバラード(東宣出版 はじめて出逢う世界のおはなしシリーズ)

…ブッチャーティとかも訳してるこの出版社のシリーズは打率が高すぎる。訳も全部良い。古本で見かけたら即買いしているのだがこれもよかった。クトゥルフのリメイクで発送はシンプルなんだけど、ブードゥー気味な能力者の黒人ギター弾きが資本家や警官の白人どもから力を取り戻すかどうか、というキャラクターに妙味がある。このシリーズは基本中編で、あっさりした綺麗な話なのかと途中予想させつつラストでもう一押しある、というものが多い。

 

ブッカケゾンビ

…ロメロが帯書いてたけど、おもいっきしトホホなホラー映画のノベライズという感じだった。新しいといえば新しい。時間の無駄といえば時間の無駄だ。大学新入生のときに仲良くなった韓国の留学生にぶっかけうどんという美味いものがあるという話をしたらヒドい嘘つくなと軽蔑されたことは毎春思い出す。あと、ぼっかけって方言にはめちゃくちゃ腹が立つ。たいたんとかもいやだ。あれらはウムラウトみたいなもんで、ひらがなで近似できない、しちゃいけないものなんじゃないか、ていうかこんな言葉書き留めるために文字は存在してい無い気さえする。

 

日本一の幽霊物件 三茶のポルターガイスト(幻冬)

…幽霊と共に30年、オカルト好きで見える体質でもある著者が幽霊物件に住んでという思い出話。バンバン出てくるだけあり怪異の変化球がけっこう良い。めちゃくちゃ見てるひとは透明感に敏感な気がする

 

ポプラ花井 ラブホ盗聴(Kindle unlimited)

…これは絶対に広まってほしい。8000本からなるテープの文字起こしはコレクターとしての業であると決意した花井が一発目に起こしたのは金玉が好きで好きで仕方ない女のテープ!マジかよ!!どんなセレクトかわからない半端な筋書き(全部画面1枚に収まるよう文字に変な圧縮をかけていてこれもまた怖い)が続くものの、肝心なテープの中身は花井が要約していたり、節々で性癖(ギャル語のほうの意です)を吐露しているからぜんぜん厚みがない、とはいえとても元気にさせてもらったけど

 

安田峰俊 北関東アンダーグラウンド

ベトナム移民の現状がわかる良書。著者は中国人カルチャーに明るく面白い本を剛柔織り交ぜて書いているが、今回は通訳をつけて足で稼いでいた。面会いったり家凸したりでつかむ移民にたいする雑感は荒いとこはあるが説得力がある。いま推進されている電子決済やインボイスによって現金使う流れが細ったら、それだけ不法滞在者やらの地下経済圏にとってはダメージなんだろうけれど、それだけじゃなくて現金とっぱらいで成立させている産業はどうなるんかと不安に思わなくはない、とはいえ我々現金が好きすぎるから、そんな心配はないか、これからは現金がパンクだ。心して消費