全裸オリンピックまゆみ

くだらないものが矢鱈目につく精神衛生の危機を迎えている、と感じる今日この頃、

誰が一番早く走ったり泳いだりできるかなんていうテレ東深夜に似つかわしい程度の企画の祭典オリンピックなぞ、淡々と開催してしまえばいい。開催してもしも云々と、天秤に比べる物など何もない。もともとこのような企画を世界規模で4年に1度開催するという時点で狂っているのだから…

もちろん、このような下らない遊びをしているくらいならば他に取り組むべき人類課題はたくさんあるとも思う。最強の格闘技とは何かという問いについては、UFCルールが暫定的共通尺度として機能し始めてなお、まだ検討の余地はある。貴重なガソリンを垂れ流し世界からマジな野郎を集めて4年に1度開催するくらいならば、目潰しと金的、そしてヌルヌル攻撃は当然ありにすべきだろう。金的が鍵になればエマワトソンをはじめとする女性のファイターにも分があると思う。今気になっているのはマイケル・ヴェノム・ペイジ。手足のリーチを生かしたカンフーなのかテコンドーなのかわからない謎の間合いから相手の懐に柔軟に飛び込んでしなやかにKOを奪う、モハメドアリの衝撃はこんなんだったのではないかと思わせる綺麗な試合をずっと本当にずっと続けている。中止するならば、すでに製造しているであろうTOKYO2021メダルは全て彼に送りつけるべきだ。きっと次の試合で全部をぶら下げて登場してくれるだろうから。

 

ラーナー・ダスグプタ『ソロ』を読んだ。面白い本の話をたくさんしてくれる大沢さんが当惑したツイートをしていたところちょうど中古で目にしたので買ってみた。大沢さんには前会ったときに松本圭ニの詩人調査を気軽な気持ちでおすすめしたらすぐ買って読んで気に入ってくれて、家にお邪魔したときに本棚を見たら良い小説に挟んでしまってあってとても嬉しかった。

ソロはブルガリアと科学の歴史に翻弄される盲人の一代記に内包される群像劇、ではあるんだけれど、変な二部構成になっている、ということは目次からすでに匂わせている。後半は全て架空の生き物の章タイトルがついていて、物語とは何かという問いを読者に差し向けるやり方は極めて最近の自分の好みの小説。主題が特になく、さして絡み合わない人物関係もテクスチャとして機能していてクールですごく良い本だった。

最近ずっと、映画のなかには映画が、本の中では本が出てくるように創作物のなかでそのフォーマットに近い創作が行われると面白い、むしろ真摯に作られるのであればそうあるべきなんじゃないかと強く思っている。し、実際にそんなのが増えてきているんじゃないか。外形的な要員として機能しているのは、ジョブズの呪縛によって脳味噌がマルチタスク化していて、ひとつのコンテンツを消費する集中力が無くなっていることがひとつあるんじゃないかと思う。勘の良い連中は入れ子の構造にすることでコンテンツ自体を強化しているんじゃないか。入れ子というよりは、ボーカルに何重にもオートチューンをかける感覚に近いかもしれん。重要になるのは主題ではなくてレイヤーの関係がもたらすテクスチャ、という感じ。身も蓋もなくいうとデカプリオマジギレ映像集ことインセプションこそが現代フィクションのあるべきフォーマットを提示したということになる、けれどもうインセプションのことなんてとうに皆忘れてしまったかな(高校球児のような美しい涙)

 

勘が良い、といえば虹のコンキスタドールというアイドルがすごい。赤西くんの元カノことキョンキョンによるありがたい啓示以降、アイドルはヨゴレな仕事ではなくなり、承認欲求を充足するために冴えない男共にサーヴィスをする、という売春的な構造がアイドル産業にはありがちだけれど、それをぎりぎり回避するスリリングさが虹コンにはあってそれが巧妙。根本凪さんをはじめとするアイドルにならなければもっと精神衛生が悪かったであろう人たちをpixivが寄せ集めて集団セラピーを施しながら、夏になると必ず水着という古典的な営業努力をしつつも、歌のなかで水着であることのエクスキューズやアイドルとしての自意識への言及は欠かさない。東京ダイナマイトが寿司ネタとして普及させたヌーブラを用いて全員平等に谷間を作るのも、巨乳という前世代的なアイコンを無化していて快い。蛭田愛梨さんがいちばん可愛いと思うんだけれど、単に目が離れているだけなんだろう。

 

全裸監督第二部の放送(史実通りであればおそらく暗い話になるだろうから今回はあまり見たくないのだが、そもそも金欠でNetflixを解約しているのでその心配はいらなかった)にあわせて本橋信宏の新AV時代が文庫化されたので買ってみた。列伝形式になっていて、これまでの仕事のダイジェストが主になっているようで少し残念。だけれども密着取材はうまいんだろうなとは思う。村西とおる引退までを扱う前作のAV時代は濃密な日々の記録が自分の作家人生の悩みとともに記されていたのが泣かせるポイントで、この本が奇跡みたいに出来すぎているだけなんだと思う。多作でいい本も多いから今後もできるだけフォローしていきたい所存

 

暑くなってきて週に一度は体調が悪い。このまま体調が悪い日の割合がどんどん増えていってヨボヨボの老人になってしまうのだろうか、非常に不安

最近やたら旅行記を買ってしまう。今は小熊英二のインド日記をちまちま読んでいる。本人も自覚しているように旅慣れていないからか的外れな異文化考察も多いけれど、ナショナリズムの研究者がインドを見たらこんなに面白いのか、という出来事感想の連続が気に入っている。