シャコの海鮮物語

親戚や知り合いの子供らがスクスク育つ以外は紛うことなき終わりなき日常を生きているうちに時すでに師走、年末の紅白ではなんとマツケンサンバが見られるという朗報が。振付師のマジーは生きているのか?加齢や借金苦などでバックで出れないんだとしたら代役は是非ともクリス松村(クスリのアナグラム、かつ顔色劇悪でヒヤヒヤするオネエ)でお願いします。

 

休みの日は主に映画。ヒューマントラストでやってるマレーシア日本合作の『カムアンドゴー』に期待をかけたものの、

 

※ネタバレ有

このまま!シェイクシェイクシェイクヒップ!(米米クラブは上手いこといったJAGATARAであったという思いを強くしている。しかし同時代のプラスチックスやハルヲフォンもなんかそんなかんじだし、もしかすると真面目にポップスやるとなるとダンサーやら不審者やらで一通りの頭数を揃えるのが当時の常識だったのかもしれない。景気いいよな)

 

そうそれで期待をかけたものの、これが体調悪くなるくらいストーリーが破綻している。面白かったのは、稲川素子事務所風ではないリアルな就労者が各国たくさん出てきて、まあまあ現実感のある生活を送っているところ、ここまではすごい。しかも日本語学校教師やハーフの生きづらさまでカバーしている目配せは素晴らしい。外国人就労のノンフィクションだと思って涼しく眺めていれば2時間半はあっという間に過ぎる。しかし非常にムカつくのは、群像劇なのに物理的ニアミス程度でしか皆がなかなか錯綜しないし全体の持っていき方の傾向性共通性も特に見出せない。令和の時代にこんな投げっぱなしの子供だましは良くない。マイノリティ映画はこの手の稚拙さにびっくりすることが多い(ムーンライトなんてそのまま異性愛に置き換えたら陳腐すぎてゲロでます)。それだけでなくストーリーの中心を、よりによって出張中の身なりのいいマレーシアのエリートサラリーマンと日本人家出少女のロストイントランスレーション風のロマンスに据えてしまっているところが何より最悪。極めつけはこの群像劇におけるトリックスター千原せいじ(芸人だけあってペルソナが確立されており演技はめちゃめちゃいい)演じる警察官で、ヨメに外国人の彼氏がいることを見破り、冒頭の白骨化死体事件を解決したその会見で世相を斬るという立場や回収タイミングの直接加減が見ていて恥ずかしくなる。孤独な時代だ、とかいう千原せいじまんまの薄めの事件の総括、いやいや嫁さん外国人と不倫して孤独打破しとるやんけ、もっと抱いたげて、という感想しか残らない。おれが潔癖すぎるのか!?

 

いっぽう最近はピンチョン『ブリーディング・エッジ』を読むのに時間をとられている。さすがに5年くらい今の仕事続けてるだけ給料が微増しており、その分最近できるようになった新しい贅沢は「とりあえずピンチョンやマッカーシーの訳が出てたら買う」ことくらい。ピンチョンを読んで長期雇用の恩恵を享受しているのはなんだか複雑な格好だけれども。デビュー以降一貫してピンチョンの群像劇には、全ての人間が真偽入り混じるサブカルチャーを共有しながら、時にドラッグの力を借りて共感覚的に繋がっていくという特徴がある。その点で長編であることの妙味には欠けるものの、ピンチョンの関心はストーリーを綺麗に紡ぐことではなく、現代資本主義社会の主体性のなさと勝手にのっそりと向かいつつある方角を手探りで示す(齢80を超えてなお!)ところにあるのだと思う。今作はテロ前後の没落ITバブル界隈がサイバー空間へ逃げ込む話。コロナからのメタバースっていう今まさに読んでってかんじすな。日本人でこういう発散する長編を書いている人いないしな、ゲーマーっぽい宮部みゆきあたりが案外こっそりやってんのか、しらないが

インターネットが何なのか、ということを大なり小なり問わずして文学が成り立つのかとさえ最近思う

 

昨日はゴア映画のオールナイトに感涙。だいたい辛い思いをすることが多い朝5時からの4本目が絶妙なインディー感で心地よくなった。出だしからボートのエンジンの調子が悪くて無人島に漂着すると…というくだりでなぜかしっかりエンジン全開で島にむかって爆走してて、島には地獄のマイスター軍団(幹部だけなぜかゾンビ、一部はなぜか忍者)、彼らは軍服にアルミホイルの仮面、アルミホイルの剣、油性ペンの髭で裏切り者を処刑しまくってる、というマッドマックスの思い出を噛み締めながらでなければ処刑シーンを除いては目も当てられない

少ない予算でも週に一度しっかりアテレコ、殺陣、爆破を繰り返す戦隊モノのクオリティはすごいな、と思いつつ、それらが基準点として相互理解されているからこそ世界のインディゴア映画は思い切った捨象や稚拙なミスを悪びれもなく大っぴらにできているのだと思う。そんな細かいこと気にする暇あったら首モゲたときの血飛沫を一滴でも増すべきだろうから。全世界のオトコノコのチームプレーってかんじで平和な気持ちになった。満員の会場は9割以上がほとばしる男性で小便器がパンクしてたしね