爆笑になるなら月夜はおよしよ

超久々に中古レコ屋で燃えたのはブート盤コーナー。フェティシズムもなく音質にも拘りがない以上、サブスクを契約しているからにはデータで聴けるものを買う意味が全く見いだせない、だからといってブートの所有欲ばかりが掻き立てられるのは逆説的で皮肉なことなんだけど。サブスクの一番の功績は○○を聴いたことがある、ということが立派なことでは無くなったということだ。そんな煙たい話はこりごりで、本当にサブスク万歳。サイケな体験を望む消費者はこれからはいかに聴かないか、ということが重要になってくると思う。最近、自己変革を促すために一か月間ずっと気になっていた森進一だけ傾聴してみたところ、歌心というものがなんとなくわかってきた。その結果、たけし映画にて中島みゆきをカラオケするダンカンの節回しに感動して映画館でたくさん泣いてしまった。それからというもの、この動画もほぼ毎日見続けている。

takeshi kitano's 3-4X10月 (karaoke scene) - YouTube

というのはさておいて、好きな音楽家の調子の悪いときの録音物ほど愛しいものはないんであって、ブートはその人らの芯がうかがえて良い。ブライアンウイルソンの2001年のライブはジャケットの蝋人形と見紛うほどのぎこちないジャックニコルソン級のスマイルそのままに中身も冒頭は学芸会のような出来なんだけど、上り調子でダブルアンコールに応えるころには往年の艶を取り戻すその過程が感じられる本当に良い代物だった。そんで最後もうできんできんと言うてラブアンドマーシーでおしまい。ミニにタコができるほど聴きたい200円名盤。

ベックのテレビ録音のブートもセットがいろいろで面白かった。ベースはカントリーにあるのに飄々とオールドスクールっぽい感じになったり変な人だ。当時はなんだかわかんなかったけどドラゴンアッシュって要はベックになりたかったんかも

あとはシドバレットのファンクラブ作成のブートを買った。シドバレットは自分のなかのリズムにすごく正直に弾いててびっくりする。正しいアコギの使い方だと思う。アコギはなぜこんなにも普及したのかと思うくらいに難しい楽器に感じる。アヤパンと滝修行してみたり、コンビそろって婚外サクラブする等、アコギを持て余す歌手は多い。

 

まとまった時間ができたのでデヴィッド・グレーバー『ブルシット・ジョブ』を読んだ。言うことわかりやすくてかつカッコいい、戦隊ヒーローのような彼は死んで本当に残念だ。死ぬな!!これは資本論を更新しにかかっているんじゃないか、提言に重きがない社会描写に主眼があるところも意図してかわからないがそっくりだと思う。情報技術と金融の発達にあわせて70年代以降やりがいのない仕事が増えていて、特にやりがいがあるケア労働は低賃金に甘えさせられてる一方で多くのホワイトカラー特にエグゼクティブ層の仕事は悲しいほどに無意味だ(そしてマゾ的長時間労働と過度な消費が表裏一体のものとしてある!!)、ということを単に暴露しただけではなくて(にも関わらずその論証の細かい点において一面的な批判をしている人が多く残念特にこれとかThe Economist:「クソな仕事 (ブルシット・ジョブ)」はクソ理論 - 山形浩生の「経済のトリセツ」 (hatenablog.com))、めちゃめちゃ推進力がある本だと思う。クソどうでもいい仕事が増えている現象はは政治に分断させられた右派ー左派・資本家ー労働者に共通するんであって、そこに共感の可能性があり、政府のいらん手続きを簡略化させたりベーシックインカムを導入するなどしてケア労働を尊重することができる社会を実現する糸口になるかもしれない、という見通しは非常に建設的かつ希望にあふれるものだと思ったんだけど、

問題は自分の今の仕事が給料も安いうえにやりがいがないということだ。手取り換算でいまの時給は大体1500円くらい、残業代が2000円弱で、終わる時間は自分では決められないところがあるのが本当に苦痛。平日夜に確実に映画に行けさえすれば、金銭面は絶対に気にしないんだけど、あまりに残念。今の自分よりは中世の農奴のほうが物質的にも精神的にも絶対に良い暮らしをしていたはずだ。そして最近自分の平日一日の金銭的価値を算出することができるようになった。基本給が固定費(固定的な浪費・返済を含む)の支払いにまるまる消えているから、その計算はいたってシンプルなものになる。だいたい3時間残業するとその日は疲れて何もできず終わる。よって私の平日一日の価値は約6000円。たくさんの人から糞尿等の世話を受けて育ってきながら、3連単の5頭立BOX馬券の半額ほどの価値しかない毎日。こんな30過ぎの大人はカッコ悪すぎる。江戸っ子ということにしようかな。江戸しぐさって本当はチンチンをぼりぼり掻くことらしいですよ。

 

橋本倫史『ドライブイン探訪』…良い本だった。郷土史や交通史を参照しつつ全国各地のドライブインの盛衰を経営者にインタビューしている。ドライブインなんて完全にケア労働の側面が大きく、皆さん今まであっというまのというような濃厚な人生っぽい。資本主義の魔の手から逃れるには、地方で飲食経営、というのが正しいんじゃないかと思えてきた。このまま購買力が下がっていけば、勝手にチェーン店も減るだろうし、そのときの経済圏がどんなものになるのか楽しみでもある。

 

最近の映画情報

ファニーゲーム…スリラーの実直なヌーベルバーグっていう感じ。ドイツ人は本当に刃物が好きなんだろうという思いを強くした

サイコゴアマン…北米からニチアサへのめちゃ愛のあるアンサー。超絶泣けた。たぶんアングロサクソンツンデレに弱い。

最近のビデオ情報(いまさらモキュメンタリーブーム到来)

デモンズ…おもしろい。ダリオ・アルジェントは設定やつなぎが適当すぎて視聴者が余計な心配を背負ったまま観なければならないことが多く、そのストレスがたまらなく良い。絶対に救世主だ、というキャラがあっけなく死んで話に絡まないとか、最高。

カルト…心霊レポの体でトリプル主演の女性タレント3人が実名で出てくる。なんとあびる優以外全員大根役者(除霊師のおっさんらまでも大根。きえええい!)で、視聴者はサマーズにセクハラを受ける時と変わらないしごく自然体のあびる優に全信頼を寄せながら微妙な悪霊退治につきあわなければならないという極上の拷問を味わうことができる超良作。テレビを万引きするだけのことはあり、あびる優の頼もしさは一挙手一投足に表れていて本当に美しい。監督の白石晃司は「オカルト」みて腰抜かした。リアルとフィクションらしさを媒介する糸口の手繰り方が繊細

ブレアウイッチプロジェクト…いまみると非常にコロナ時代的。

クリープ…悪人か狂人かわからないスリルはあるけれど、モキュメンタリ―は往々にしてこのように失敗しがち(パラノーマルアクティビティと同じ轍)、という感想を抱かせるブレアウイッチは本当にすごい映画

バクラウ…町ごと地図から消えた、という面白くなりそうな設定は全然話のキモにならず、頭大丈夫かってかんじ。ブラジル人の任侠心をなんとなく理解できた点は収穫

 

小室圭さんのお母さんが松葉杖になていて、ありえないぎこちなさで闊歩してる様を週刊誌が報道。サングラスのチョイスからして香ばしく感じていたところにトドメをくらった境地で眩暈がした。あの人は本当に面白い。怪我の真偽はともかくとして、見せ方とタイミングが大仁田厚に非常に似ている。小室圭さんが天皇になりたがっているだとか、洗脳しているとか、絶縁だとか、これまでの騒動(ソースのほどんどは某大本営女性誌)ひっくるめて総じてプロレス的なので、いっそ宮内庁を廃止して新日といっしょにブシロードに面倒みてもらえばいいんじゃないかと思う。新嘗祭の設営とか地方巡業など、若手レスラーが手配しても手際がよさそう。ガッテムな国民感情とは裏腹に盛り上がる二人の恋心を応援すべく、精いっぱい下世話に騒ぎ立てるのが目下日本国民の義務というもの