爆笑になるなら月夜はおよしよ

超久々に中古レコ屋で燃えたのはブート盤コーナー。フェティシズムもなく音質にも拘りがない以上、サブスクを契約しているからにはデータで聴けるものを買う意味が全く見いだせない、だからといってブートの所有欲ばかりが掻き立てられるのは逆説的で皮肉なことなんだけど。サブスクの一番の功績は○○を聴いたことがある、ということが立派なことでは無くなったということだ。そんな煙たい話はこりごりで、本当にサブスク万歳。サイケな体験を望む消費者はこれからはいかに聴かないか、ということが重要になってくると思う。最近、自己変革を促すために一か月間ずっと気になっていた森進一だけ傾聴してみたところ、歌心というものがなんとなくわかってきた。その結果、たけし映画にて中島みゆきをカラオケするダンカンの節回しに感動して映画館でたくさん泣いてしまった。それからというもの、この動画もほぼ毎日見続けている。

takeshi kitano's 3-4X10月 (karaoke scene) - YouTube

というのはさておいて、好きな音楽家の調子の悪いときの録音物ほど愛しいものはないんであって、ブートはその人らの芯がうかがえて良い。ブライアンウイルソンの2001年のライブはジャケットの蝋人形と見紛うほどのぎこちないジャックニコルソン級のスマイルそのままに中身も冒頭は学芸会のような出来なんだけど、上り調子でダブルアンコールに応えるころには往年の艶を取り戻すその過程が感じられる本当に良い代物だった。そんで最後もうできんできんと言うてラブアンドマーシーでおしまい。ミニにタコができるほど聴きたい200円名盤。

ベックのテレビ録音のブートもセットがいろいろで面白かった。ベースはカントリーにあるのに飄々とオールドスクールっぽい感じになったり変な人だ。当時はなんだかわかんなかったけどドラゴンアッシュって要はベックになりたかったんかも

あとはシドバレットのファンクラブ作成のブートを買った。シドバレットは自分のなかのリズムにすごく正直に弾いててびっくりする。正しいアコギの使い方だと思う。アコギはなぜこんなにも普及したのかと思うくらいに難しい楽器に感じる。アヤパンと滝修行してみたり、コンビそろって婚外サクラブする等、アコギを持て余す歌手は多い。

 

まとまった時間ができたのでデヴィッド・グレーバー『ブルシット・ジョブ』を読んだ。言うことわかりやすくてかつカッコいい、戦隊ヒーローのような彼は死んで本当に残念だ。死ぬな!!これは資本論を更新しにかかっているんじゃないか、提言に重きがない社会描写に主眼があるところも意図してかわからないがそっくりだと思う。情報技術と金融の発達にあわせて70年代以降やりがいのない仕事が増えていて、特にやりがいがあるケア労働は低賃金に甘えさせられてる一方で多くのホワイトカラー特にエグゼクティブ層の仕事は悲しいほどに無意味だ(そしてマゾ的長時間労働と過度な消費が表裏一体のものとしてある!!)、ということを単に暴露しただけではなくて(にも関わらずその論証の細かい点において一面的な批判をしている人が多く残念特にこれとかThe Economist:「クソな仕事 (ブルシット・ジョブ)」はクソ理論 - 山形浩生の「経済のトリセツ」 (hatenablog.com))、めちゃめちゃ推進力がある本だと思う。クソどうでもいい仕事が増えている現象はは政治に分断させられた右派ー左派・資本家ー労働者に共通するんであって、そこに共感の可能性があり、政府のいらん手続きを簡略化させたりベーシックインカムを導入するなどしてケア労働を尊重することができる社会を実現する糸口になるかもしれない、という見通しは非常に建設的かつ希望にあふれるものだと思ったんだけど、

問題は自分の今の仕事が給料も安いうえにやりがいがないということだ。手取り換算でいまの時給は大体1500円くらい、残業代が2000円弱で、終わる時間は自分では決められないところがあるのが本当に苦痛。平日夜に確実に映画に行けさえすれば、金銭面は絶対に気にしないんだけど、あまりに残念。今の自分よりは中世の農奴のほうが物質的にも精神的にも絶対に良い暮らしをしていたはずだ。そして最近自分の平日一日の金銭的価値を算出することができるようになった。基本給が固定費(固定的な浪費・返済を含む)の支払いにまるまる消えているから、その計算はいたってシンプルなものになる。だいたい3時間残業するとその日は疲れて何もできず終わる。よって私の平日一日の価値は約6000円。たくさんの人から糞尿等の世話を受けて育ってきながら、3連単の5頭立BOX馬券の半額ほどの価値しかない毎日。こんな30過ぎの大人はカッコ悪すぎる。江戸っ子ということにしようかな。江戸しぐさって本当はチンチンをぼりぼり掻くことらしいですよ。

 

橋本倫史『ドライブイン探訪』…良い本だった。郷土史や交通史を参照しつつ全国各地のドライブインの盛衰を経営者にインタビューしている。ドライブインなんて完全にケア労働の側面が大きく、皆さん今まであっというまのというような濃厚な人生っぽい。資本主義の魔の手から逃れるには、地方で飲食経営、というのが正しいんじゃないかと思えてきた。このまま購買力が下がっていけば、勝手にチェーン店も減るだろうし、そのときの経済圏がどんなものになるのか楽しみでもある。

 

最近の映画情報

ファニーゲーム…スリラーの実直なヌーベルバーグっていう感じ。ドイツ人は本当に刃物が好きなんだろうという思いを強くした

サイコゴアマン…北米からニチアサへのめちゃ愛のあるアンサー。超絶泣けた。たぶんアングロサクソンツンデレに弱い。

最近のビデオ情報(いまさらモキュメンタリーブーム到来)

デモンズ…おもしろい。ダリオ・アルジェントは設定やつなぎが適当すぎて視聴者が余計な心配を背負ったまま観なければならないことが多く、そのストレスがたまらなく良い。絶対に救世主だ、というキャラがあっけなく死んで話に絡まないとか、最高。

カルト…心霊レポの体でトリプル主演の女性タレント3人が実名で出てくる。なんとあびる優以外全員大根役者(除霊師のおっさんらまでも大根。きえええい!)で、視聴者はサマーズにセクハラを受ける時と変わらないしごく自然体のあびる優に全信頼を寄せながら微妙な悪霊退治につきあわなければならないという極上の拷問を味わうことができる超良作。テレビを万引きするだけのことはあり、あびる優の頼もしさは一挙手一投足に表れていて本当に美しい。監督の白石晃司は「オカルト」みて腰抜かした。リアルとフィクションらしさを媒介する糸口の手繰り方が繊細

ブレアウイッチプロジェクト…いまみると非常にコロナ時代的。

クリープ…悪人か狂人かわからないスリルはあるけれど、モキュメンタリ―は往々にしてこのように失敗しがち(パラノーマルアクティビティと同じ轍)、という感想を抱かせるブレアウイッチは本当にすごい映画

バクラウ…町ごと地図から消えた、という面白くなりそうな設定は全然話のキモにならず、頭大丈夫かってかんじ。ブラジル人の任侠心をなんとなく理解できた点は収穫

 

小室圭さんのお母さんが松葉杖になていて、ありえないぎこちなさで闊歩してる様を週刊誌が報道。サングラスのチョイスからして香ばしく感じていたところにトドメをくらった境地で眩暈がした。あの人は本当に面白い。怪我の真偽はともかくとして、見せ方とタイミングが大仁田厚に非常に似ている。小室圭さんが天皇になりたがっているだとか、洗脳しているとか、絶縁だとか、これまでの騒動(ソースのほどんどは某大本営女性誌)ひっくるめて総じてプロレス的なので、いっそ宮内庁を廃止して新日といっしょにブシロードに面倒みてもらえばいいんじゃないかと思う。新嘗祭の設営とか地方巡業など、若手レスラーが手配しても手際がよさそう。ガッテムな国民感情とは裏腹に盛り上がる二人の恋心を応援すべく、精いっぱい下世話に騒ぎ立てるのが目下日本国民の義務というもの

エリエリレマタラバガニ

医療崩壊をかけたチキンレースを続けて戦闘機を飛ばしまくり金メダルをゲットさせまくることしから脳がない日本政府。一方ではNetflixが退屈が犯罪であることを発表。我々の真の君主はプラットフォーマーであることが浮き彫りになった。ユーザーフレンドリーな雰囲気を出しつつサブスクやらクーポンやらセールなどで小市民を磔刑に処しているGAFAらと比べてNetflixは潔すぎる。その真摯さに胸を打たれ、生来法令遵守をモットーとする私は積極的に動画を視聴しようと試みるも年々面白い映画を探すのがかなり難しくなっておりストレス。うじゃうじゃおすすめしてきやがるオリジナル作品群のせいだ。当然こっちは馬鹿なホラーや洋画ばかり見ているから、そんなかんじに偏向しておすすめされるんだけど、痒いところに手が届いているのは舞台設定くらい。レトロスペクティブに媚び媚びなタイポグラフィに反吐が出る、だけならまだしも、どんなあざとめの映画でも質感が統一されすぎていて、狂ってるほど似たようなカラーコレクションや音響になっちゃってるのはどうかしている。なんで全裸監督まんまの質感で70年代風ホラーを見なければならないのか。それこそ犯罪っつうかパロディ文化への冒涜だ。Netflixは貧しくみじめな日本国民にのみ世界価格を離れた値下げを敢行するかさもなくば映画界から追放されたウディアレンからキツめのセクハラを受け続けてほしい。これだけローファイ文化が普及しているんだから、あざとくレトロ調を狙うならアテレコで音割れくらいさせたらいいのに。勝新太郎なんて声がでかいのか音割れすぎてて何言ってるか一言もわからないままキャリアを終えたんだからな。その点で中村玉緒とはしっかり通じ合ってたんじゃないか。出迎える玉緒の「コカインなさい」へのアンサーは「た大麻」だったに違いない。

 

コーネリアスは猿なんだからもともとリテラシーなんか微塵も無いに決まってる。それにしても時間が経っても許されないものってあるんだなーと感動。動物裁判はかくして挙行された。かたや防衛大臣が一個人としてラーメンズの人を某団体に通報したらしいけど、あそこはナチハンターを育成してて、戦後何十年たってからも南米に潜伏していた元ナチス将校を捕まえて自前で裁判にかけて即死刑にしようとしてたかなり硬派な団体。アンドリュー・ナゴルスキ『隠れナチを探し出せ』に詳しい(亜紀書房のノンフィクションはどれも面白く、虚しく笑えてちょうどいい。本当の講談社学術文庫というかんじ)。書籍後半に出てくるのは戦後生まれのナチハンター。わけがわからないしかっこいい。13歳のハローワークでは冒頭で植物好きのガキのために紹介されたのはプラントハンターという職業で、魅力的な仕事でも時代の定めのせいで今やそれを生業とする人はいない、というエピソードを引き合いにガキ共がむやみに代々木アニメーション学院に進学しないよう諌めていたが、かたやナチハンターはまだギリギリ間に合うんじゃないか。お父さん、僕は大きくなったら絶対にナチハンターになるんだ。と5歳になった輪夢は息巻いたのだった。ナチスは絶対悪だそうだから本当に、本当に何をしても良かったのに、そっち側を掘り進めなかったラーメンズの人はつくづく勘が悪い。iPod前夜のアップルのCMに出ていた時から何も変わっていない寒さだ。いっそ支那そばずに改名したらどうか。

 

相変わらず仕事も鬼くだらなく長時間で、そのせいで浪費が止まらない。今月は100冊くらい本を買った(それだけだとキモいから久々に服も買ったし風呂も毎日入ろうとしている)。半分くらいはクレカだから逃げ切れると良いが、借金の玉の上に乗りながら坂道を転がり出すような感覚があり、こうなると毎日があっという間に過ぎているような焦燥を感じつつ実はそうでもない。敬虔な気持ちってこういうものなのでしょうか

 

イアン・マキューアンの小説が気になってる。最近はスウィートトゥースを読んだ。技巧的なのに自然なのが良いのかもしれない。次は人生の段階を読みたい。家のどこかにちょうど1冊だけあると信じて(今の家に最も多くあるのはディックの暗闇のスキャナー。表紙がかっこいい。私と戸川それぞれ2冊ずつ所持しておりいずれも未読)!

 

名画座トビー・フーパーマングラーを見た。悪魔に取り憑かれた巨大な工場の恐ろしさったら。アンチCGって気分になる。そのあと黒沢清を拝んだ。神様!!!あと35mmで観るたけし映画は本当に青が綺麗だった。あの夏いちばん静かな海が見たかったが今回はかからなかった。もし記憶障害になったとしたら真っ先にあの夏いちばん静かな海をもう一度初見したいと思っている。腕にあの夏いちばん静かな海を観ろ、と刺青を入れるべきか。あと真木蔵人 現在 でググるな、っていう指示もあわせて必須

 

本読んで映画観ての毎日を繰り返してるうちに毛根が後退してきた。確実に日々は過ぎる

かなりやバイランドにて

後手後手の感染症対応、後の時代からみたら、職業別組合や住民自治にゆだねられた極めて歴史文脈的な対応と評価きれるのではないか、という気さえしてきたが、最近の政治家のパープリン度は政治主導化してなおいっそう高まる一方だというのは否めないだろう、泣ける。夜中にファミレスに行く基本的人権を返してほしい。文化なぞどうでもいいから、というか文化は時代の鏡であって必ずいつでもどこでも生まれる。宣言が出るたびに文化云々と言うやつは無自覚的特権主義者かストリートの感覚が無い人たちだろう。

梅雨が着て自宅の空気が悪くなってきた。西洋式の生活に向かない気候で我々は頑張って文化的な生活を送っているけれど、それが張りぼてと明かされる季節。いつになったら諦めるのやらスーツもべたべたで、いますぐアロハと短パンを正装に認定してほしい(日本は絶対にアメリカに併合されるべきだった。そしたらハワイやグアムとまとめて統治してくれただろう。大統領も選べるし、地球が平らだとか言ったりして盛り上がれる)。なんで男はスーツ着てるのに女はわけわからん恰好で働くことが赦されているのか謎だ。特にオフィスでいけるとされている素材のワンピースは絶対に下品だと思う。パンツの線が出るし、出なかったとしたらTバックだからだ。どのみち不誠実である。

 

エドゥアルド・ベルキン「サハリン島」をあらすじがバカすぎて買ってみた。震災と戦争が起きた後の破滅的なサハリンを旅する、学問的なディシプリンが確立されていないボンボンの学者による遠谷物語ヤングアダルト冒険譚、ディストピア小説って流行ってるけどそうそうこれだよね的な中国人韓国人差別てが満載の、ヤングアダルト文法であてられた。いったきり戻ってこない、流れ星のような読書体験つうかなんつうか。可もなく不可もなく

 

「ロビンソンの庭」を映画館でみた。じゃがたらはずっと自分のヒーローで、東京のいまのアングラシーンとの接続を色濃く感じることも度々あった、そのプロデューサーが監督の映画でしかも本人公認のリマスターときたらさぞ美しいんだろう、と思ったものの、直後は予想以上の80s自意識ノリに胸焼け、しかし監督の山本政志、彼は実写ジブリ映画の担い手間違いなし。投げっぱなしの過度に物質的な自作映画、遺産が転がり込んできたから億かけて撮れたと言っていた。ものすごくよくできていると数日たって思えてくる。終わりのトークは破滅的にひどかった(相手は植物が生えるまで待ってたんですか、と聞いて会場を凍らせる逆撮りも知らない結構有名な映画監督)ものの、面白いことを言っていた。話の筋からしたら意味がない長回しのシーンがあって、「いまみあらカットするところたくさんあるんだよね。でもそこ切ったら映画が壊れるんだよな」だって。映画が壊れるだって!!!!かっこいい奇跡ですね

つづけて「脳天パラダイス」もみてみたら、脚本が金子のお兄ちゃん。遺産も使い果たしていたようで話もとっちらかっていた(もともとめちゃくちゃなのにドラッグがファクターとして出てきて訳がわからない)んだけど、節々に着想が金子みたいなところがあり、家族っていいなと思った。自分は弟となんか似た発想をシェアしているんだろうか。マンション買うとこくらいは似たかった。非常に悔やまれる。

 

新作は必ず読むようにしている阿部和重「ブラック・チェンバー・ミュージック」は微妙だった。ずーーーっと映画っぽい長編を書き続けている、それだけでありがたい。存在が大好き。いつまでも頑張ってほしい。しかしユーモアが減っているのは家庭環境のせいかもで心配。次も読むけどな。オーガ(二)ズムは作家人生を終えるんじゃないかと思うほどよかったから、まあこんなものかもしれない

 

全裸監督シーズン2は悲しい話だしやっぱ1で終わるべきだったと思う。卑弥呼は準主役級なのに名前が変えられていた。この企画自体、黒木香に許可がないからだめだという意見もあるが、地上波、しかも朝生まで出てたらそれはもう文化人で、その人がいたことや事実は無しにはできないんじゃないかな。有名税とはまた別の話で。卑弥呼が文化人ではなかったというのは皮肉的で面白い

 

失禁するくらい面白いものがみたい。最後にちびりそうになった映画は早稲田松竹でみたパーソナルショッパー

 

愛しノゲイラ

育休の皺寄せをくらい数ヶ月の激務。赤ちゃんはいくら可愛くても、その魅力がリーチしない範囲に至るまでのいろんな人に迷惑をかけながら産まれてくるものと実感。自分はその恩恵を受ける可能性がかなり低いものの、子供は社会で育てるもの、国の支援不足に違いない…気にしない気にしないという仏の心持ちで最近はこっそりそいつのこと育休さんって頭のなかで呼んでるんだった。復帰したときハゲ狂ってたりしてな、はは…

望んでいないにも関わらず産まれてくる二階幹事長みたいな顔面でありがちな赤ちゃんは皆、親の乳を吸ったりシモの世話をされたりして原罪を背負うことになる。これがやっかいなシステムで、それから数年後には負い目慣れした思春期を迎えては女子供皆を傷つけたり、原付を直結して走り出したり、直管マフラーで環七にブッコんでいってしまうのであって、さらには自立にあたって親にいくら払えば乳を吸った事実やシモの世話をされた恩義が帳消しにできるのかという問題に直面することになる。上級国民の皆さんは両親を高級ホームにブチ込めば解決なんだろうけど、それ以外のソリューションもあってしかるべきだと思う。汝親を親でなくす場合は数百万払え、と聖書に書いておいてくれてもよさそうなもんだけど、まあプライスレス☆なんだろうな。んママァ〜…(膝が粉々になったとき、病院で足にダンベルが針金でぶら下げられてベッドから動けず、金属のトレーにそのまま用を足してたんだけど、20kmほどかけてはるばる見舞いにきた両親に「ちょっとうんちしたいから帰ってくれる?」と言ったときの自分はかなりの孝行息子だったと思う。これこそが子育ての醍醐味だ)

でも申し訳ないという気持ちはすごく心地が良いものかもしれない。うちにトンカツを食べに来たハナちゃんは、待ち合わせに遅刻をするとすごく円滑に相手と話すことができると言っていた。彼女なりの即席ポトラッチなんだろう。風呂に数日入ってない状態のときとかギャンブルで綺麗にスったときとか自分なんてこんなもんだと妙に落ち着くのともちょっと似てる気がする、いろいろありますな

 

国民/労働者というのは国家/資本家の労働サブスクリプションであるからして、ない手札をさぞありげに切り続けていくしかない。

 

「もう革命しかないもんね」森元斎…アナキズム研究者の本。清貧で全うに生きている人の記録、文体からして友達がすごく多そうなのはわかる。地元の歴史を紐解いたり農作業したり友達とスキルをシェアして助け合っていたら面白いよね、という話。そんな生活できたらしているよ、できないからいろいろ困ってるんじゃないか…もっと頑固なところがある人だと思っていたが驚く。

あとタバコの吸い殻を下水口に捨てるのは革命にあたるのかどうかというかねてからの問いは残った。あれで怒られるのはわけがわからない。下水管料金は高すぎるし灰皿分のサービスくらいは提供してもらってもいいだろう。我慢できないものに対して勝手に課金されるのは困る。こっちとしては金属のトレーにクソしてそのまま道路に捨てても構わないんだぞマジでむかつきますわな

 

オリンピックを目前に行政機関が本気をだしてきた。ワクチンが各省庁や地方から同時に手配される模様。これはオリンピックまでにマジである程度打ち終わっちゃうんじゃないか。摂取予約アプリもかなりアジャイルな完成度であることがニュースになったけれど、普段の官僚のやり方からスイッチしていることを考えれば明るいニュースに違いない。それだけ急いでいるんだな、シンゴジラ(霞ヶ関で大人気だったらしい)が良いブレストになったんじゃないかな。しかしどれくらいの人が打つんだろうか。7割弱でアメリカは頭打ちだけれど、要するに地球が丸いと思ってる人の割合までには達しているってことだろう。だからこっちで8割超えないとなんか、ヘコむな… 仮に後々、薬害あったとわかってもみんな一緒ならぜんぜんいいと思うんだけどね。ついでになんか特殊能力が身についたらいいよな。発話のコピペ機能とかさ。

 

シネマートで「葵ちゃんはやらせてくれない」を観た。金曜の日経の映画欄でバカ映画が取り上げられたらそれはメッセージで、評価の星の数に関わらず観た方がいい。期待してなお予想以上の出来。キングレコードがエロ映画リバイバルシリーズをしていて、結構まじめにやっている。日活ロマンほどからみが無くて、いまどきにリブートされてる感じ。どれも宇波拓という方が音楽をしている。仕事が誠実でよく知らないけどなんか好き。

ストーリーはほんとバカで川下さんていう自殺した奴がセックスしたいってんで命日にでてきては一番可能性がある2010年の大学時代に親友を巻き込んで戻るっていうのを積み重ねるタイムループものなんだけど、その構造を利用して古くなり腐ったロマンポルノ文法の照れ隠しを潔癖なほどに器用にしてるのがすごく心地よかった。絡むか絡まないかという分岐遊びや、映研の制作のなかの陳腐な劇中歌の繰り返しにもギミックがある。その自主制作の撮影が進んで物語の種明かしになってるんだ。で、やっぱエロ映画っていったらフォークなんだけど、その照れ隠しには三上寛三上寛本人で出演させるという徹底ぶり。この配慮は泣かせる…

しかしフェミがみたら怒るようなものではあった。バランス感覚が素晴らしすぎる。

 

酔っ払ってスケボーしたらすごく楽しかった。とにかくめちゃくちゃ速く走る安村

 

 

 

 

 

全裸オリンピックまゆみ

くだらないものが矢鱈目につく精神衛生の危機を迎えている、と感じる今日この頃、

誰が一番早く走ったり泳いだりできるかなんていうテレ東深夜に似つかわしい程度の企画の祭典オリンピックなぞ、淡々と開催してしまえばいい。開催してもしも云々と、天秤に比べる物など何もない。もともとこのような企画を世界規模で4年に1度開催するという時点で狂っているのだから…

もちろん、このような下らない遊びをしているくらいならば他に取り組むべき人類課題はたくさんあるとも思う。最強の格闘技とは何かという問いについては、UFCルールが暫定的共通尺度として機能し始めてなお、まだ検討の余地はある。貴重なガソリンを垂れ流し世界からマジな野郎を集めて4年に1度開催するくらいならば、目潰しと金的、そしてヌルヌル攻撃は当然ありにすべきだろう。金的が鍵になればエマワトソンをはじめとする女性のファイターにも分があると思う。今気になっているのはマイケル・ヴェノム・ペイジ。手足のリーチを生かしたカンフーなのかテコンドーなのかわからない謎の間合いから相手の懐に柔軟に飛び込んでしなやかにKOを奪う、モハメドアリの衝撃はこんなんだったのではないかと思わせる綺麗な試合をずっと本当にずっと続けている。中止するならば、すでに製造しているであろうTOKYO2021メダルは全て彼に送りつけるべきだ。きっと次の試合で全部をぶら下げて登場してくれるだろうから。

 

ラーナー・ダスグプタ『ソロ』を読んだ。面白い本の話をたくさんしてくれる大沢さんが当惑したツイートをしていたところちょうど中古で目にしたので買ってみた。大沢さんには前会ったときに松本圭ニの詩人調査を気軽な気持ちでおすすめしたらすぐ買って読んで気に入ってくれて、家にお邪魔したときに本棚を見たら良い小説に挟んでしまってあってとても嬉しかった。

ソロはブルガリアと科学の歴史に翻弄される盲人の一代記に内包される群像劇、ではあるんだけれど、変な二部構成になっている、ということは目次からすでに匂わせている。後半は全て架空の生き物の章タイトルがついていて、物語とは何かという問いを読者に差し向けるやり方は極めて最近の自分の好みの小説。主題が特になく、さして絡み合わない人物関係もテクスチャとして機能していてクールですごく良い本だった。

最近ずっと、映画のなかには映画が、本の中では本が出てくるように創作物のなかでそのフォーマットに近い創作が行われると面白い、むしろ真摯に作られるのであればそうあるべきなんじゃないかと強く思っている。し、実際にそんなのが増えてきているんじゃないか。外形的な要員として機能しているのは、ジョブズの呪縛によって脳味噌がマルチタスク化していて、ひとつのコンテンツを消費する集中力が無くなっていることがひとつあるんじゃないかと思う。勘の良い連中は入れ子の構造にすることでコンテンツ自体を強化しているんじゃないか。入れ子というよりは、ボーカルに何重にもオートチューンをかける感覚に近いかもしれん。重要になるのは主題ではなくてレイヤーの関係がもたらすテクスチャ、という感じ。身も蓋もなくいうとデカプリオマジギレ映像集ことインセプションこそが現代フィクションのあるべきフォーマットを提示したということになる、けれどもうインセプションのことなんてとうに皆忘れてしまったかな(高校球児のような美しい涙)

 

勘が良い、といえば虹のコンキスタドールというアイドルがすごい。赤西くんの元カノことキョンキョンによるありがたい啓示以降、アイドルはヨゴレな仕事ではなくなり、承認欲求を充足するために冴えない男共にサーヴィスをする、という売春的な構造がアイドル産業にはありがちだけれど、それをぎりぎり回避するスリリングさが虹コンにはあってそれが巧妙。根本凪さんをはじめとするアイドルにならなければもっと精神衛生が悪かったであろう人たちをpixivが寄せ集めて集団セラピーを施しながら、夏になると必ず水着という古典的な営業努力をしつつも、歌のなかで水着であることのエクスキューズやアイドルとしての自意識への言及は欠かさない。東京ダイナマイトが寿司ネタとして普及させたヌーブラを用いて全員平等に谷間を作るのも、巨乳という前世代的なアイコンを無化していて快い。蛭田愛梨さんがいちばん可愛いと思うんだけれど、単に目が離れているだけなんだろう。

 

全裸監督第二部の放送(史実通りであればおそらく暗い話になるだろうから今回はあまり見たくないのだが、そもそも金欠でNetflixを解約しているのでその心配はいらなかった)にあわせて本橋信宏の新AV時代が文庫化されたので買ってみた。列伝形式になっていて、これまでの仕事のダイジェストが主になっているようで少し残念。だけれども密着取材はうまいんだろうなとは思う。村西とおる引退までを扱う前作のAV時代は濃密な日々の記録が自分の作家人生の悩みとともに記されていたのが泣かせるポイントで、この本が奇跡みたいに出来すぎているだけなんだと思う。多作でいい本も多いから今後もできるだけフォローしていきたい所存

 

暑くなってきて週に一度は体調が悪い。このまま体調が悪い日の割合がどんどん増えていってヨボヨボの老人になってしまうのだろうか、非常に不安

最近やたら旅行記を買ってしまう。今は小熊英二のインド日記をちまちま読んでいる。本人も自覚しているように旅慣れていないからか的外れな異文化考察も多いけれど、ナショナリズムの研究者がインドを見たらこんなに面白いのか、という出来事感想の連続が気に入っている。

与沢翼は札束みたいな恋をするか

4月に仕事が暇になる夢は潰え、また2年くらい忙しくなることが発覚。自分のストレス耐性が嫌になる。余暇時間と引き換えに残業代を得て、雑な消費快楽や不注意から生じる浪費に費やされていくことを眺める単純な2年間になりそう。まあ人生というのは案外そういう見通せた期間の連続なのかもしれない

 

最近の映画情報

「超擬態人間」…逆輸入スプラッタSci-Fiホラー。怖いし雰囲気がある。風刺的なメッセージもあり、すごく面白かった。映像と同期して音でびびらせるのはよくないが、その手の割にドローンがめちゃくちゃ良かった。なんかのベーシストらしい

「BLISS」…未体験ゾーンの映画たち、今年はこれしか見ていない。ラリって一生懸命絵を描くNY在住の話。アートシーンと音楽の文化的接続とか社交の雰囲気がリアルな感じがしておもしろかった。ドゥームっぽいロックバンドがたくさん出る。適当にサントラを買ったらそれらの曲は入ってなかった。

メイヘムの話…このタイミングでの公開はブラックメタルの流行を予見させる。恋するフォーチュンクッキーを聞いた瞬間から思っていることだけれど、コンテンツ自体はインドネシアの5年前の流行が日本の来年の流行。最初から終わりまで緊張のブラフと狂人の嫉妬関係。執拗な刃物の登場は昼間にみるものではなくあてられた…

「きまじめ楽隊のぼんやり戦争」…文化庁助成の9時5時で戦争する村同士の話。のんびりしていて良かった。登場人物全員白痴、わざとのんびりしたテンポの心ここにあらずというコミュニケーションで繰り返される会話のリズムのせいか楽隊のマーチがただただ映える。マクロからミクロまで動かす人の憎悪はそれぞれの心の根底にあるために戦争はなくならない、という映画を税金で撮る意味とは母さん日本は平和です…黒沢清のカリスマを思い出すかんじ

ペドロ・コスタ諸作…これこそ退屈と紙一重の魅力。オールナイトは拷問だったが面白かった

「セ/ノーテ」…本当にクソ映画だ、映画になっていないだけならまだしも植民地主義的発想が垣間見れてもうどうしようもない。これまでの人生でいちばんつまらない映画で驚いた。そのあとの愚痴で盛り上がれたから金を返せとは思わないが

 

最近の書籍情報

エドゥアルド・ガレアーノ「日々の子どもたち:あるいは366篇の世界史」…今日は何の日、を古代から311に至るまで書き綴った最近のラテンアメリカ小説。年末の群像いろんな人のベスト3でやたらあがっていた。そこまで面白くはないが、確かに序盤から妙味は全開で、それゆえに選ばれたところがあるんじゃないか。もしかしたらみんな長編を読む時間がないんだと思う。年3冊もゆっくり読めない可哀そうな人たち。ラテンアメリカ知識人の先住民への温かいまなざしを感じるポストコロニアルな世界史うんちく本だと思えば、まあいいかという感じ。

サラ金の歴史」(中公新書)…ばつぐんに面白かった。参考文献が政府統計からナックルズ的な駄本まで膨大で先駆者としての気概を感じる。よく整理されていて面白かった。アイフルはノンバンク系の残党として応援したい。小金をつまめるパスは用意してあったほうがいい。ちょっとの金さえあれば脱出することができるピンチもある。ネットで情報ぬきまくってAIで信用が測ることができるようになってきているし、利息はばらばらで個性豊かな金融サービスがこれから出てくるんじゃないか。ラインポケットマネーは借りる時の罪悪感が全然ない。それはそれで問題だと思うけど、「ラインにこにこ融資」じゃやっぱ借りたくないな。それにしてもウシジマくんの貢献はすごいものがあると思う。ハウツーかつ道徳の教科書だと思った。新宿租界のイメージ戦略はけっこうウシジマくんの世界をトレースしていると思う。炊き出しはえらい。がんばれ。

炊き出しといえば、可能性が余りあるネット世論の形成において、我々非資本家階級は窮地に立たされていると思うことが多い。草の根的に広がっているのはこども食堂、入管など。それ自体確かに良くないことなんだろうけど、そればかりに執着して気をすり減らすのは為政者からすればそのムーブメントはなんのダメージもなく、じっくり改善して時間を奪える好機であることに注意すべきだ。安倍政権が続いたのは彼の天然のわきの甘さがしょうもない追及を招き、国民とへぼ野党の「時間」を奪うことに結果的に成功したからであって、人徳のレベルだったと思う。マリオになれるし。

我々には時間しかないのに、デジタル社会の経済モデルではしばしばその時間さえも切り売りされ始めてまさに悪夢だ。

「日本の包茎」澁谷知美…先駆的な研究なのはわかるけど、大部分を占めるのが雑誌のタイアップ広告の言説の分析でくだらない。副題は200年史とあるけれど、これではタイアップ広告なんだから広告史だ。もっと性についての国のアンケート結果とか、男性器の機能についての医学的知見の変遷にも気を配るべきだったと思う。それゆえにフェミニストとしての立場からの提言はわずか10ページで上滑り感があった。本人は面白いところはあるけれど武/田砂/鉄の帯文は信用してはいけないと気付く。

「旅の終わりの音楽」エリック・フォスネス・ハンセン…これは当たりだった。タイタニック号で沈没直前まで演奏していた軽音楽のバンドメンバーがどういう人生を歩んでその船に乗り合わせたかという長編。沈没は1912年なので第一次大戦とほぼ近く、テーマも19世紀と20世紀の断絶に翻弄された人たちの喪失とわずかな気づきのような幸福という、カズオイシグロ「日々の名残」やパワーズ「ー農夫」が取り上げた話と近いものがあるんだけど、個々の問題のバランスがよく(貴族階級と世襲制度の消滅、イギリス帝国の残滓、ユダヤの世俗化、印象主義の勃興にともなうロマン派音楽の陳腐化という過去に引きずられて楽師になる人たち)、けれどそれだけではなくて後半は思春期の失恋と音楽の神性という普遍的な気づきを得たメンバーが出てきて、という構成が素晴らしい。これは本当に良い話。大戦と違って最後沈んで無に帰すというところがはかなげで良いし。

 

そんなかんじ