探偵物

ブコウスキー『パルプ』はたけしの任侠物のような様式美に支えられたくだらなくて美しい仕事のイズム。次にたまたま100円で拾ったポール・オースター『幽霊たち』のほうもまた強いフォーマットだけど、大抵の人がやっつけていかなければならない仕事をする意味との折り合いのつかなさ、その不気味さを感じる。後半は引き込まれて服に火花が飛んで穴があいていた。この順番で読んでよかった。逆にオースターのなんか悲しい話は、ジョージ・ソンダースの『リンカーンとさまよえる英霊たち』に上書きされてタイトルを忘れてしまった。だれか教えてくれませんか。けどソンダースのこれは本当にものすごい小説だった。この世に生を受けることの虚しさや不条理さは貧富や身分の差に関わらずやってきて、愛もまた平等だ。リンカーンはイケメンなだけ、ほんの少し得だった人生だったんだろう。強烈な話だった。ソンダースは肉体労働とかギター弾きして若い時過ごしてたんだって、そんなかんじだね。