リモート日記 第二章

これまでは別に派手に遊ばなきゃどーってことなかったのかもしれない。もっと派手に遊んどきゃよかったよ、これから本当の恐怖が始まるんだ…

 

たくさん本を買い込んで年末を迎えたものの、いざ時間ができるとくだらない本から読んでしまう。アランナ・コリン『あなたの体は9割が細菌』はミクロなサイケフィーリングを得ることができた。人間は自分の細胞の10倍くらいの細菌と共生してるっていう、いるかいないかわからんウィルス以上に気にするべきは腸内細菌のバランスだったってはなしだ。お腹弱い奴特有のいけ好かない性格、あれは細菌にマインドコントロールされているに違いない。殺意をもったメイドが給仕する食生活によって腸内細菌の偏りを作られた元善良な男が密室殺人を犯す、という話は5年後あたりコナンの脚本になると思う。自分も試しに性格を変えてみたくてカルピスが開発した乳酸菌タブレットを飲み始めることに。そんで急に女を殴る奴になったりしてな、おお怖

 

細胞小器官のミトコンドリアは別の生き物だったっていう気持ち悪い話を角川ホラーの原作かなんかで読んだ日には不気味さで寝れなかった。パラサイトイヴからせんだったかもしれない。90年代の日本のホラーは今振り返ってみれば、映画文法を豊かに駆使していて低予算映画や前衛映画の楽しみ方を前もって教えてくれていた気がする。原作の小説もかなりしっかりしてた。

で、黒沢清に最近ハマっている。00年あたりのを観ているけれど、本当に面白いし子供の頃は全然真剣に見れてなかったことを痛感する。『カリスマ』がすごい。道徳の絵本チックに自由論、国家論、戦争論をクソ田舎の狂人達が体現しつつ、クソ田舎すぎて誰しもがヨソモノで外に出たい欲求がその道徳のシーソーを崩して変なことにしちゃっているっつう、黒沢清の映画に出てくる役所広司の大半が自我が無くて素晴らしい、おれは主人公に自我が無い映画がみたいんだ、90年代の角川松竹のノワールは世界の最先端をいってたんじゃないか、もう金が余りすぎて二流監督にそれなりの金が降ってきて大変だったんだろう。黒い家いいよな〜すっごく怖いんだけど終わりの歌m-floだからね、ずっこけますわ!流行歌は罪ですね、ビリーアイリッシュなんかも20年たったらどうなるかわかりませんよ ダ…

10年代は黒沢清役所広司もあまり観る気がせず(役所広司は顔を見ただけでカレーのことを思い出すから面倒)だったんだけど、数年前、散歩する侵略者って公開タイトルみたときに、ああまだ変な人なんだ、と思って安心した。助走をつけたいまこそ観るべき時かもしれない。

今見ると時代遅れのアテレコもまたしびれるんだよな。遠くでぼそぼそ言ってるシーンなのにめちゃんこ吐息で音割れてたりして。

 

読まず嫌いのカフカ多和田葉子の選集(集英社文庫、800ページくらいある)が出ているのを知りとうとう買った。多和田葉子はドイツ語も達者でマブい。絶対に、絶対に多和田葉子村上春樹より偉い。毎年ノーベル賞の発表の際に本屋に集まる薄ら寒い連中に対して蛍光色で多和田葉子って書いてあるウチワを振りながら叫んでやりたい。「心にぐっとくるようなこと書いてくれる葉子ちゃん」。カフカでもなんでも読めるぜ!あと公文書選集が載っているのが良い。文体のリズムがなんとなく伝わるような、「採掘場による事故防止」、100年を隔てた今決して有益ではないが非常に勉強になった。しかし変身は可愛そうな話だな、なんでこんなこと書くんだろ。介護問題を予見している。体液が出たり止まったりする話はどんなんでも怖い。ずるです