リモート日記 マイルスのオジキ編

よく行く近所の喫茶店禁煙ファシズムの影響下で孤軍奮闘しているせいか、だんだんマルチや芸能事務所詐欺等、客層がろくでもない感じになってきた。コーヒーはおいしいんだけど。今日は中年男性のグループが家族との諍い話を大声でしているのが断片的に耳に入る。オヤジ…借金…競馬…懲役明け…かばう…オジキ…利息…くらいでこれはロケット団なのかしらんと合点、7日で1割というは高利息に冷や汗をかきつつ自分の机に五本の爪の跡(鬼の萬田はんがまだ若き頃、客に茶店で追加融資を懇願されるも返済不能と判断して初めて心を鬼にしてライターで手を燃やした際にできたというあれです)が無いか確認するもレジ横から持ってきた別冊映画秘宝カルトムービー特集くらいしか物騒なものはなく安心。

飲食店はどこもつぶれず乗り切ったようで安心。むしろちまちま商売してたところは営業短縮と助成金で楽したみたい。これからどうなるんだろう。インド料理屋は最近ネパール人がやってることを前面に出して言葉を教授してくるもののネパール料理がいっこうに増えない。それと発泡酒という概念を理解していないのか、生ビールが時価仕入れ値に応じて乱高下する。正直でいいな。ネパール人の店はクロージングタイムがはっきりしてないところが多いと思う。夜中も客は入れるけど、平気で掃除したり広い席で休んだり大声でスカイプしていたりしていて、落ち着く。しかし東京の飲食店は総じてぬるいな。たまに地方に行くと気合と優しさに圧倒される。どっちのよさもありますね。

 

久々に古本屋でゾーンに入って2時間ひたすら棚を見た。文庫が全体的に安く実家にあるから躊躇していた日本の小説を買い直す。柴田元幸関連、創元、岩波ジュニア文庫が異様に充実していて楽しかった。ジュニア文庫はつくづく誰に読ませたいのかわからない。子供の頃親に読まされなくてよかった(うちの両親はろくに本を読まず、子供の頃の私に新幹線ホームの売店吉田類の酒場放浪記をおすすめしてきたほどだ。あと太宰。とりあえず太宰というのはなんでなんだ、とりあえず清張や小松左京ならまだわかるけど。しかしハルキストじゃなかったのが不幸中の幸、あれは危険思想なので)。ひねくれ小説ばかり読んでたら今頃テニスボールを使ったアナルオナニーに精を出していたはず。ぞっとする。

あいうえお順と出版社ごとのバランスが文庫棚の見せ所。欲を言えば国書刊行会がもう少しあれば、でもサンドニ『夢の操縦法』をゲットだ、探してた。

菊孔関連本が大量に出ていてげんなりするもおかげでマイルスデイビスの自叙伝をゲット。最近マイルスのキャリア末期の動画が増えてまた気になっている。ずっと好きなのは70年前後のロックにあてつけたゴチャゴチャした盆踊り期。当時の若いメンバーの親はその意味のまるで無さに泣いてたと思う。フィルモアライブはほんとうに良い。生まれてきて本当によかった。最期の5年くらいのマイルスは多重録音を始めて音源の緊迫感がまるで無く笑ってしまうし、ライブでもまるでインタープレイが無さが怖くて避けていたんだけど、YouTubeみてると結構そうでもないことがわかった。基本的な流れとしてはフュージョンめいたブラコンでマイルスは最初にソロをとる→執拗にずれたモードをなぞってバンプ(霊言くらいぼやっとしたFMシンセとアフリカ太鼓)が少し曲がる→サックスのお兄ちゃんがデロデロ吹く。マイルスの倍尺で創造性なし→テーマリフてマイルスかピョ、ピョてする→バンプが曲がりつつギターかベースのソロ、複数人いるので馴れ合いで掛け合い→テーマリフでマイルスがピョ、ピョてして終わり

というこの構造、老体がめちゃめちゃ省エネで曲全体にアドリブを効かせている。基本ゴルフしていてたまに出てくる社長にマイルスはいよいよ成り果てたんだと思えば納得できる。しかしこんなややウケな音楽は後にも先にも他に無いだろう…てことで何考えてんのか知りたい所存。エレクトリックマイルスの研究本は最近いいのがでてて、基本的にはスタジオ録音を切り貼りしてライブテイク等別素材に使いまわしていたらしい、テープの時代によくやるよなと思いつつソリストのモードのずれが肝なんだという思いが強まった。

 

外出できないことに対するストレスが全くないことに自己嫌悪してしまう。平時には戻ってもこの間の習慣やテクノロジーが日常を不可逆に更新してしまうだろう。ネット乞食ではどうにもならない業種がたくさん出てくると思う。ほんとうにその店の人が好きなら中途半端に手を差し伸べるのは残酷すぎる。後に引けなくなるし下手に背負わせず新たな門出を祝ってあげるべきだ。いつおさまるか誰にもわからないけど、とりあえず今ではないのは確かだからな。戦闘機のケツから出るモクモクに抗ウイルス成分少しでも入れりゃよかったのに。